アルヴァ・アアルトは、イタリアとりわけトスカーナ地方の絵画のように美しい風景や街並み、なだらかな丘、中世の香りを運ぶ都市や建築をこよなく愛したと言われています。1924年、アルヴァ・アアルトと妻のアイノ・アアルトは新婚旅行でイタリアを訪れ、フィレンツェ、ヴェローナを巡り、恐らくシエナにも立ち寄ったでしょう。それからアイノ・アアルトが亡くなる前年の1948年まで、アアルト夫妻は幾度となくイタリアへの旅を楽しみました。この旅は、アアルト夫妻が手掛けたセイナッツァロの村役場やラウタタロのオフィスビルなどの建築にも色濃く表れています。
アルヴァ・アアルトがデザインした、グラフィカルで規則的なパターン「シエナ」は、彼が幾度も訪れたイタリアの都市がその名の由来です。ドゥオモ広場に位置するシエナ大聖堂の建築に着想を得て描かれたと言われています。
シエナは、1954年に発表されて以来、アアルトが手掛ける建築のインテリアにたびたび登場し、現在まで、アルテックのコレクションの定番として愛され続けています。アルテックでは、いつの時代も暮らしを彩るテキスタイルとして、時代に合わせたさまざまなカラーバリエーションで展開してきました。2021年春に加わる3つの新たなカラー、そのすべてはアルヴァ・アアルトの建築や作品に見られる特徴的な色や素材を参照しています。3色のうちの2色は、ファンの間で「シャドー シエナ」の愛称でかつて親しまれた、異なる色のシエナが影のように重なり合うパターンです。
アルヴァ・アアルトが外壁、内壁、床材に好んで用いた素材が赤レンガです。ムーラッツァロ島の実験住宅と呼ばれる夏の家や、マサチューセッツ工科大学内ベーカーハウス学生寮などには、素材感を最大限に活かしながらも、さまざまなバリエーションの赤レンガが使われています。
多産なキャリアの中でも比較的後期の作品に好んで使われた大理石。大理石を用いたアアルト建築として、ヘルシンキのフィンランディアホールや国民年金局、ラウタタロのオフィスビルなどが挙げられます。
ムンキ二エミのアアルト自邸やアアルトスタジオに代表されるアアルト夫妻の建築やインテリアは、自然と建築の美しい組み合わせが特徴です。さらに、木材ややラフィア素材の生地など、自然素材ならではの豊かな味わいが活かされています。
イタリアの旅でアアルト夫妻が出会った素材やパターン、色合いは、二人の思い出とともに心に刻まれ、その後の建築とインテリア、さらに細部の要素にまで影響を与えました。