ロナン&エルワン・ブルレックによってデザインされた「ロープ チェア」は、正反対の要素を掛け合わせることにより構成されています。 最新の技術とクリエイティブな表現、頑丈な構造と柔軟な背もたれ、固く無機質なチューブと有機的なロープ。 世界が注目するパリの新美術館「ブルス・ドゥ・コメルス – ピノー・コレクション」がついに開館を迎え、館内に佇むロープチェアが来場者を迎えます。この建物は、18世紀に建てられた歴史的建造物で、かつては穀物取引所として使用されていました。日本の建築家、安藤忠雄の手により改修され、世界屈指の現代アートのコレクターとして知られるフランソワ・ピノーのコレクションを展示する美術館として生まれ変わりました。フランソワ・ピノーの指名により、「ブルス・ドゥ・コメルス」の内装とインテリアを担当したのは、パリを拠点として活動するデザイナー、ロナン&エルワン・ブルレックです。ロナン&エルワン・ブルレックは、2015年に「カアリ」シリーズ、2017年にテキスタイルデザイン「リヴィ」をアルテックとともに発表しています。
ロープチェアは、美術館内の通路から建物間の連絡通路に沿って並んで設置されています。柔らかなロープの曲線とミニマルな直線的なシルエットは、安藤忠雄が手掛けた高さ9メートル、直径30メートルものコンクリート製の円筒状展示室に美しいアクセントを添えます。太陽の傾きによって光と影の入り方が変わるこの空間は、来場者が展示という外からの刺激を受け取るとともに自らの内と深く向き合うことを構想して設計されました。新たに美術館として生まれ変わった穀物取引所は、過去と現在、過去の遺産と現代の創造という対極にあるもの同士が互いに交じり合う空間でもあるのです。
芸術性と実用性を兼ね備えたロープチェアもまた、正反対の要素を緩やかに繋ぐ存在です。空間に佇む確かな構造による存在感、同時に、有機的なロープが腰かける人それぞれに合わせたデザインを変幻自在に形作ります。芸術性(アート)と技術(テクノロジー)の融合を現代に体現するロープチェアは、現代アートとアーティストの創造性が溢れながらも、広く公共に開かれた「ブルス・ドゥ・コメルス」に相応しい一脚です。
Photo 1: Courtesy Bourse de Commerce - Pinault Collection & Studio Bouroullec, © Tadao Ando Architect & Associates, Niney et Marca Architectes, Agence Pierre-Antoine Gatier, Studio Bouroullec. Photo 2: Courtesy Bourse de Commerce - Pinault Collection, © Studio Bouroullec. Photo 3: Courtesy Bourse de Commerce - Pinault Collection, Photo: Maxime Tétard, Studio Les Graphiquants, © Tadao Ando Architect & Associates, Niney et Marca Architectes, Agence Pierre-Antoine Gatier. Photo 4 and 5: Courtesy Bourse de Commerce - Pinault Collection, Photo: Marc Domage © Tadao Ando Architect & Associates, Niney et Marca Architectes, Agence Pierre-Antoine Gatier, Studio Bouroullec. Photo 6: Courtesy Bourse de Commerce - Pinault Collection, Photo: Timelapse Go.